後遺障害等級認定が納得できない場合や非該当の場合はどうしたらよいのか
交通事故で受傷して、症状固定時に、後遺症が残った場合、納得できる損害賠償金を受け取るためには、後遺障害等級認定を受ける必要があります。
そして、後遺障害の等級認定は申請しなければ受けられません。
しかも、その申請をすれば、必ず希望する等級認定を受けられるとは限りませんし、場合によっては、非該当ということもあります。
では、後遺障害等級認定が納得できない場合や非該当の場合はどうしたらよいのでしょうか。
そのような場合には、異議申立、自賠責保険・共済紛争処理機構(以下「紛争処理機構」といいます)の利用、訴訟提起をすることで、適正な等級が認定される可能性があります。
以下においては、等級認定が納得できない場合や非該当の場合の対応について、説明することとします。
後遺障害等級認定に対する異議申立
後遺障害等級認定を申請した結果、想定より低い等級認定で納得できない場合や非該当の場合、この認定結果に不服があるときは、異議申立をすることができます。
審査機関
異議申立は、被害者請求の場合は自賠責保険会社に、事前認定の場合は任意保険会社に行います。
しかし、異議申立事案の審査は、損害保険料率算出機構(以下「機構」といいます)の自賠責保険(共済)審査会(以下「審査会」といいます)が行います。
審査会では、審査の客観性・専門性を確保するため、日弁連が推薦する弁護士、専門医、交通法学者、学識経験者等、外部の専門家が審議に参加するとともに、事案の内容に応じ専門分野に分けて審査を行います。
等級認定の理由、非該当の理由を知ること
異議申立をする前に、認定結果の理由を検討しなければなりません。
まず、手始めに、機構の自賠責損害調査事務所(以下「調査事務所」といいます)から送られてきた「通知書」を検討することになりますが、認定結果の理由が詳細に記載されているとは限りません。
そのような場合には、より詳細な理由を知るため、自賠責保険会社宛に、保険会社手持ちの資料の開示を求めることになります。
すなわち、自賠法は、保険会社に対して、保険金・損害賠償額の請求があった場合の書面交付義務(16条の4)や、書面による説明義務等(16条の5)を定めています。
したがって、請求者は、認定判断の理由の詳細について書面による説明を求めることができ、この場合は、「後遺障害等級認定票」、「後遺障害事案整理票」、(外貌醜状を調査事務所で確認したときに作成される)「面接調査票」などの書面を交付すべきことが通達で定められています。
これらの資料に基づき、異議申立をすべきかどうか検討することになります。
異議申立の方法等
異議申立については、一般の被害者向けに保険会社に定型書式も備えられていますが、書式が決まっているわけではありません(自賠責保険会社名、同保険の証明書番号など特定のために必要な事項は、もちろん記載を要します)。
訴状と同様に、申立の趣旨(どのように見直せと申し立てるのか)と申立の理由(申立が正当であることを基礎付ける具体的な理由)を記載する必要があります。
申立理由を基礎付ける証拠・資料の提出が必要なのも、訴訟と同じです。
したがって、異議申立をする場合には、認定結果の理由が妥当でなく、現在の各症状を裏付ける医学的証拠などがあることを示す必要があります。
できれば、主治医に協力を依頼するなどして資料を補充することが望ましいのですが、実情は、必ずしも協力が得られないこともあるようです。
このような場合、被害者の陳述書、異議申立書における弁護士の主張などにより、異議申立をすることになります。
そして、交通事故に精通している弁護士であれば、認定された後遺障害等級が正しいかどうかは、後遺障害診断書、各種検査結果、場合によってはMRI画像を見て判断できます。
また、認定された後遺障害等級が間違っている場合、あるいは後遺障害非該当の場合であれば、何が問題なのか、不足している法的・医学的な証拠は何なのかを明らかにすることができますので、弁護士のサポートを得ることも必要であると言えます。
異議申立は、被害者に不利益に変更されることはなく、回数制限はなく、加害者に対する請求とはなりませんので、時効中断効もありません。
紛争処理機構の利用
紛争処理機構という機関を利用するという方法があります。
紛争処理機構は、ADR(裁判外の紛争解決機関)の1種で、後遺障害等級認定に関する不服申立に関する審査機関ですが、書面審理のみで当事者に口頭陳述の機会があるわけでもありません。
異議申立と異なり1回しか認められず、その判断は自賠責保険の最終判断となります。
したがって、通常、紛争処理機構の利用は、異議申立後にさらに不服がある場合に申請することになります。
訴訟提起
上記いずれの方法でも、納得のいく結果が得られなかった場合には、訴訟提起をすることになります。
裁判所で認定されたものが、最終的な結果となります。
まとめ
被害者が認定された後遺障害等級に納得できない場合や後遺障害が非該当となった場合、当事務所は、診療記録等を精査し、法的主張を整えて、異議申立をサポートします。
また、異議申立をしても、紛争処理機構を利用しても、被害者の納得のいく結果が得られなかった場合、被害者が希望すれば、訴訟提起をすることにより、後遺障害の等級認定を争うことを全面的にサポートします。
後遺障害等級の認定結果に不服がある方は、是非、当事務所にご相談ください。