高齢者や子どもの死亡事故の場合の慰謝料の相場はどのようなものか

交通事故で亡くなった場合、被害者の遺族は、被害者本人の慰謝料と、遺族自身の慰謝料の両方を請求できます。

では、高齢者や子どもの死亡事故の場合の慰謝料の相場はどのようなものでしょうか。

慰謝料を算定する場合、実務上、自賠責保険基準任意保険基準裁判(弁護士)基準という3つの基準があります。

基準によって慰謝料の相場に違いがあり、裁判(弁護士)基準が最も高額になりますが、それぞれの基準では死亡慰謝料はどうなるのか、さらに高齢者や子どもでの死亡慰謝料はどうなるのかについて、説明することとします。

慰謝料算定の基準

慰謝料というのは、精神的な苦痛に対する損害を賠償するためのものですから、その苦痛の受け取り方も、各人各様に異なるため、本来は、個別に算定しなければなりません。

しかし、それは大変難しく、慰謝料の性質上、必ずしも明確な数字で示せるものではありません。

そのため、交通事故の慰謝料の算定方法は、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判(弁護士)基準に分かれています。

これらの基準の中では、裁判(弁護士)基準が、最も高額になります。

自賠責保険基準

自賠責保険基準とは、自賠法に基づく自賠責保険により定められている基準です。

任意保険基準

任意保険基準とは、任意保険会社が定めている基準です。

しかし、任意保険基準は、任意保険会社に全社統一的な基準はなく、自賠責保険基準と裁判(弁護士)基準との間で各社が独自に定めた基準にすぎないもので、各社とも非公表であるものの、おおむね、自賠責保険基準を下回るものではないとされています(以下では、一応の目安の慰謝料を示しています)。

裁判(弁護士)基準

裁判(弁護士)基準とは、(公財)日弁連交通事故相談センター東京支部編「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)あるいは (公財)日弁連交通事故相談センター編「交通事故損害額算定基準―実務運用と解説」(通称「青本」) に基づく基準ですが、赤い本と青本でも多少の相違がありますので、慰謝料は赤い本によっています。

これらは、あくまでも基準であって、ケースごとに個別の事情が考慮され、慰謝料が算定されることはいうまでもありません。

死亡慰謝料の相場

自賠責保険基準の場合

請求する要項 慰謝料
死亡被害者本人(相続されるもの) 400万円
遺族の請求権者1人の場合 550万円
遺族の請求権者2人の場合 650万円
遺族の請求権者3人以上の場合 750万円

※自賠責保険の支払基準が改正され、令和2年4月1日以降に発生した死亡事故については、新基準が適用されます。令和2年4月1日以前に発生した死亡事故については、死亡した本人の慰謝料は350万円です。

請求権者は、死亡被害者の父母(養父母を含みます)、配偶者、子(養子、認知した子及び胎児を含みます)になります。

なお、高齢者や子どもの死亡慰謝料の相場は、上記の死亡被害者本人と同じになります。

任意保険基準と裁判(弁護士)基準の場合

下記の額は、死亡慰謝料の総額であり、近親者固有慰謝料も含まれています(遺族が多くても少なくても総額は変わりません)。

死亡者の立場 任意保険基準の慰謝料 裁判(弁護士)基準の慰謝料
一家の支柱 1500万円~2000万円 2800万円
母親・配偶者 1500万円~2000万円 2500万円
その他 1300万円~1500万円 2000万円~2500万円

裁判(弁護士)基準では、次のようになっています。

「一家の支柱」が一番高額なのは、被害者の世帯が主として被害者の収入によって生計を維持されているからといわれています。

母親・配偶者については、子どもが成長して独立ないし自立している場合や高齢の主婦については、2500万円までは認められない裁判例も少なくないようです。

その他には、高齢者、独身の男女、子ども、幼児等が該当する取扱いですが、「人生の多くを享受することなく命を奪われた若年者と、ほぼ人生を全うした高齢者とを同列に扱うことは、不適切である」との観点から、決定的な要因ではないものの、年齢という要素も考慮され、幅が設けられているといわれています。

以下では、高齢者と子どもについて、それぞれに特有な事情及び慰謝料の増額事由について、検討してみます。

高齢者の場合

高齢者とは、一般的に、65歳以上を指す場合が多いようです。

高齢者といっても、無職、求職中、就労中の者がいると考えられますが、就労中の場合は、家族を扶養している場合が多いため、無職あるいは求職中の者に比べ、慰謝料の相場が高額になる傾向にあります。

また、年金生活者については、一般的に、「一家の支柱」という立場ではないと考えられています。

なお、どんなに高齢者であっても、慰謝料を2000万円未満とされた近時の裁判例(相当額の搭乗者傷害保険金が支払われているような事案を除いて)は、見当たりません。

子どもの場合

子どもの年齢については、上記のとおり、3つの基準のいずれであれ、死亡慰謝料を算定する際にはあまり重要ではありません。

ただ、親の立場からは、どの年齢になっても、子どもは子どもでしょうから、基準という意味では、親元から独立しているかどうかが被害者を子どもとみなすかどうかの一つの判断基準となり得ましょう。

なお、30歳未満であれば、特段の増額事由が存しなくとも、2400万円以上の慰謝料を認める裁判例が多いのが現状です。

慰謝料の増額事由

下記のような特段の事情が認められる場合には、慰謝料の増額事由となることがあります。

例えば、加害者の故意若しくは重過失(飲酒運転、居眠り運転、わき見運転、無免許運転、ひき逃げ、著しいスピード違反、信号無視など)、加害者の事故後の態度が著しく不誠実(常識に反するような対応をしたなど著しく不相当な場合)、被扶養者が多数などです。

まとめ

ご家族が死亡事故に遭われた場合、遺族の方の精神的損害は計り知れません。

死亡事故の場合、保険会社が提示してくる死亡慰謝料は、裁判(弁護士)基準よりも低額であることがほとんどです。

そのような場合、当事務所は、遺族の方々の気持ちに寄り添いながら、亡くなられたご家族の立場(高齢者か子どもか)がどうであれ、その方々の死亡に伴う慰謝料について十分検討し、実務上、3つある慰謝料の算定基準の中で、最も高額となる裁判(弁護士)基準に基づき、少しでも慰謝料が高額になるように、保険会社との示談交渉を進め、遺族の方々の納得が得られるように、全面的にサポートいたします。

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