交通事故の賠償金として介護費用は請求できるか?
交通事故の程度によっては、被害者の方に重い後遺症が残ってしまい、1人では日常生活を送れなくなってしまうこともあります。
このような場合、家族や外注の介護の方に依頼して介護をしなければならなくなりますが、介護は精神的にも肉体的にも大変なものですし、介護に必要となる様々な金銭的負担も大きいです。
こうした負担を少しでも補填するために、被害者側としては、加害者の保険会社に今後被害者の余生にわたり必要となる介護費用を請求していきたいところです。
では、どのような場合に介護費用が請求でき、どのくらいの金額がもらえるのでしょうか。
この記事では、交通事故の賠償金として請求する介護費用についてご説明します。
介護の必要性が認められれば介護費用は請求できる
介護費用を保険者側に請求するためには、被害者の方が生活を送るために、今後は他人の介護が必要であることを、裁判所や相手方の保険会社に認めてもらう必要があります。
後遺障害慰謝料を受け取るためには、自賠責事務所による後遺障害等級申請をして認定を受ける必要がありますが、この等級認定にあたり、後遺障害別表第1・1級または2級としての認定を受けている場合は、介護の必要性はすでに証明されています。
後遺障害別表第1・1級または2級の認定要件の中にすでに、「介護を必要とする」という文言が含まれているので、これらの等級が認定されているということは、既に介護の必要性が証明されているからです。
後遺障害等級別表第1の1級や2級よりは軽い程度の後遺障害として認定された後遺障害等級3級、5級、7級などの場合では、被害者側が、示談交渉や裁判手続きなどにおいて、具体的に、被害者がいかに介護を必要としているかということを、日常生活状況報告書や陳述書などを提出したり証人尋問を行ったりして、主張立証していく必要があります。
介護費の計算方法
介護の必要性が認められた場合、請求できる金額を求めるための算式は、日額×365日×被害者の方の平均余命までのライプニッツ係数となります。
以下上記の算式に含まれる係数の意味を解説します。
介護の日額
算式にあてはめるべき日額は、介護を家族が行うか、外注するかによっても違います。
家族で行うか外注するかは、家庭の事情や考え方によっても異なり悩ましい点ですが、家族で介護をはじめたあとに介護費の認定を争う訴訟になった場合、外注費が認められないリスクもありますので、将来外注をすることを考えている場合は、早めに人に頼むことを検討することも一つの案でしょう。
交通事故の損害賠償の裁判基準をまとめた赤本では、近親者の介護を日額8,000円、職業付添人は外注実費全額としています。
しかし、認定は被害者の後遺症の程度、介護の種類や介護に費やす時間などによって異なりますし、金額が大きいため加害者側の保険会社とも争いになりがちです。
家族で介護する場合に認定されている日額の幅は、後遺障害等級1級や2級の場合で、1日4,000円~10,000円程度が相場のようです。
また、家族が介護を行うケースで、常に介護が必要な場合に日額8,000円から9,000円、随時介護を要する場合で日額7000円程度が認められた判例があります。
妥当な金額を獲得するため、家族にかかっていく介護負担についてしっかりと主張立証していく工夫が必要になります。
外注する場合は、受注先の会社により料金設定が異なりますが、1日10,000円~30,000円程度が多いようです。介護費は、何人のヘルパーさんに依頼するか、サービスの内容にもよって異なります。
その金額が必要なことをしっかり主張立証していくことで、実費からの引き下げ交渉を受けず、満額でもらうことを目指しましょう。
中間利息控除
計算式でライプニッツ係数(中間利息控除)という係数をかけている理由は、本来であれば、事故後被害者の方の平均余命までの間、毎日発生し償還を受け取るはずの介護費用を前倒しで一括で損害賠償金としてもらうため、前倒しでもらわなかった場合の運用利息分は控除するべきという考え方によります。
ライプニッツ係数は、この運用利息金利を年3%という前提で求められた係数になります。なお、2020年4月1日の改正民法の施行前は、年5%という前提で計算されていました。
しかし、実際の世の中の金利と比べると年5%で高すぎるのではないかという議論があり、3%に引き下げられたのです。
引き下げがなされたとはいえ、高額な利息控除を受けないための賠償金のもらい方として、一括でもらうのではなく定期金賠償という方法でもらうという方法があります。
メリットとしては、中間利息控除を受けずにお金が貰えるという点のほか、平均余命よりも被害者の方が長生きされた場合に、介護費用を最期までもらえるという点があります。
一方、デメリットとしては、お金のもらえる時期が遅くなるほか、支払い途中で加害者の保険会社が倒産してしまった場合以後はうけとれなくなるというリスクがあります。
なお、定額金賠償については、裁判官によっては消極的な判断となる場合もあるようです。
最後に
いかがでしたでしょうか。交通事故で介護が必要な状態になってしまった場合、介護の必要性が認められれば、将来の介護費用を賠償金として請求することができます。
介護費用を計算する算式としては、日額×365日×被害者の方の平均余命までのライプニッツ係数となります。日額は家族で介護するか外注するかによっても異なります。