後遺障害の併合・相当・加重では、後遺障害の等級はどうなるのか

交通事故で受傷した場合、1つの後遺症だけが残るのではなく、複数の後遺症が残ってしまうことがあります。

そして、当該後遺症が、自賠法施行令(以下「施行令」といいます)の別表(以下「別表」といいます)第2の等級の複数の後遺障害に該当する場合、どの後遺障害にも該当しない場合、既存の後遺障害に事故で受傷して同一部位の後遺障害の程度が重くなる場合もあります。

このような場合の取扱いが、順次、後遺障害の併合・相当・加重といわれるものです。

では、後遺障害の併合・相当・加重では、後遺障害の等級はどうなるのでしょうか。

以下において、順次、それぞれについて説明することとします。

なお、後遺障害等級表は「等級表」と表記しています。

等級表の仕組み

等級表は、身体を10箇所の部位に分け、次に、それぞれの部位における後遺障害を1種又は数種の障害群に分け(障害の系列)、部位ごとに区分された後遺障害は、更に35種の系列に細分され、同一欄内の後遺障害については、これを同一の系列にはあるものとして取り扱うこととしています。

また等級表は、後遺障害を1級から14級までの14段階に区分しており、この場合の同一系列の後遺障害相互間における等級の上位、下位の関係を障害の序列といいます。

併合

別表第2の等級に該当する後遺障害が2つ以上ある場合は、重い後遺障害の該当する等級を繰り上げ、当該後遺障害の等級とするか、又は重い後遺障害の該当する等級によります。

このことを「併合」といいます。

この併合については、施行令2条1項3号ロ~ホに規定されています。

これらの場合「併合〇級」とします。

併合の原則

施行令2条1項3号ロ~ホによれば、次のようになります。

  • 5級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合は、重い後遺障害の該当する等級を3つ繰り上げる
  • 8級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合は、重い後遺障害の該当する等級を2つ繰り上げる
  • 13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合は、重い後遺障害の該当する等級を1つ繰り上げる
  • 上記以外の場合は、重い後遺障害の該当する等級による
  • 14級に該当する後遺障害が2つ以上ある場合は、等級が繰り上がることはなく、14級のままとする

例えば、5級4号で、かつ、8級6号の場合には、併合して重い後遺障害の該当する等級を2級繰上げ、併合3級とし、8級2号で、かつ、10級8号の場合には、併合して重い後遺障害の該当する等級を1級繰り上げ、併合7級とし、12級6号で,かつ、14級2号の場合には、併合して重い後遺障害の該当する等級により、併合12級とします。

併合の例外

みなし系列の場合

同一部位に系列を異にする複数の後遺障害が生じた場合は、同一系列とみなして取り扱い、併合はしません。

例えば、両眼球の視力障害・運動障害・調節機能障害・視野障害の各相互間、同一上肢の機能障害と手指の欠損又は機能障害、同一下肢の機能障害と足指の欠損又は機能障害は、同一系列とみなして取り扱い、併合はしません。

障害の序列を乱すこととなる場合

併合して等級が繰り上げられた結果、障害の序列を乱すこととなる場合は、障害の序列に従って等級を定めることとなります。

例えば、5級4号で、かつ、他の上肢につき4級4号の場合、併合して等級を繰り上げると1級になるとはいえ、当該障害は1級3号の障害の程度に達しないので、併合して1級を認定してしまうと、障害の序列を乱すこととなります。

このように、上位等級に達しないものは、すべて下位等級に該当するものとして取り扱い、併合2級とします。

1級にとどめることとなる場合

併合して等級が繰り上げられた結果、等級が1級を超える場合であっても、等級表上、1級以上の等級は存在しませんので、1級にとどめることとなります。

例えば、2級2号で、かつ、3級5号の場合は、併合して等級を繰り上げると1級を超えますので、併合1級とします。

組合せ等級の場合

系列を異にする複数の後遺障害が、等級表上では組合せ等級として定められている場合には、併合することなく、等級表に定められた当該等級により認定します。

例えば、4級5号で、かつ、他の下肢につき4級5号の場合は、併合することなく、1級7号の等級により認定します。

1つの障害を複数の観点で評価しているにすぎない場合

1つの後遺障害が観察の方法によっては、等級表上の2つ以上の等級に該当すると考えられる場合には、その1つの後遺障害を複数の観点(複数の系列)で評価しているにすぎないので、この場合には、いずれか上位の等級をもって、当該障害の等級とします。

例えば、12級8号の結果、同一下肢につき13級8号の場合は、上位の等級である12級8号をもって、当該障害の等級とします。

複数の後遺障害が派生関係にある場合

1つの後遺障害に他の後遺障害が通常派生する関係にある場合には、いずれか上位の等級をもって、当該障害の等級とします。

例えば、8級8号とともに、当該箇所につき12級13号の場合は、上位等級である8級8号をもって、当該障害の等級とします。

相当

別表第1・第2の各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であって、各等級の後遺障害に相当するものは、別表第1・第2にある後遺障害に準じて、当該等級の後遺障害とします。

このことを「相当」といいます。

この相当については、別表第1備考、別表第2備考6に規定されています。

この「別表第1・第2の各等級に該当しない後遺障害」とは、次の2つの場合をいいます。

ある後遺障害が、等級上のいかなる後遺障害の系列にも属さない場合

例えば、嗅覚や味覚の脱失は、いかなる後遺障害の系列にも属さないが、それぞれ12級13号に準じて12級相当、嗅覚や味覚の減退は、いかなる後遺障害の系列にも属さないが、それぞれ14級9号に準じて14級相当とします。

等級表上に、その属する後遺障害の系列はあるが、該当する後遺障害がない場合

例えば、1関節が8級6号で、かつ、他の1関節が10級10号の場合には、それぞれの属する後遺障害の系列はあるが、2つの後遺障害がまとまって該当する後遺障害がないため、同一系列の中で併合の方法を用いて、重い8級を1つ繰り上げ、7級相当とします。

加重

既に後遺障害のある者が事故によって同一部位について後遺障害の程度が加重した場合、加重後の等級に応ずる保険金額から既にあった後遺障害に応ずる保険金額を控除した金額が保険金額となります。

このことを「加重」といいます。

この加重については、施行令2条2項に規定されています。

例えば、既に8級6号であった者が、その後事故で同一上肢につき5級4号となった場合、加重後は5級4号となりますが、もともと8級6号の後遺障害があったので、その分は差し引くということです。

自賠責上の限度額は5級が1576万円、8級が819万円になるため、差し引きされた757万円が支払われるべき保険金額となります。

まとめ

交通事故で受傷して後遺症が残った場合、複数の後遺症が残ってしまうことがあります。

それら後遺症が、別表第2の等級の複数の後遺障害に該当する場合、後遺障害の併合・相当・加重ということになれば、支払われる保険金額に大きく影響します。

交通事故に遭い、後遺障害の等級認定が心配な方は、是非、当事務所にご相談ください。

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